就業規則が副業を制限できる範囲は、労務提供上の支障・秘密の漏洩・名誉信用の毀損・競業の4類型までです。
「副業禁止」と書いてあっても、それだけですべての副業が禁じられるわけではありません。
ただし会社が定める許可や届出の手続きを飛ばしてよい話ではありません。
公務員は会社の規則ではなく法律で制限されるため、例外として考えてください。
本記事では、自分の副業がどこまで該当するかを確かめ、手続きを踏んで進める順番を整理しました。
ぜひ参考にしてください。
就業規則が副業を制限できるのは4つの場合まで
就業規則が副業を制限できるのは、次の4類型に当たる場合までです。
| 類型 | 具体例 | 自分の副業が当たるかの目安 |
|---|---|---|
| 労務提供上の支障 | 深夜勤務の掛け持ち | 翌日の本業に支障が出るか |
| 業務上の秘密の漏洩 | 本業の顧客情報を使う仕事 | 社内で知った情報を使うか |
| 名誉・信用の毀損 | 勤務先を出した発信 | 会社名が特定される形か |
| 競業 | 同業他社での勤務 | 客層や商材が重なるか |
※2026年8月時点の情報です。最新の内容は各公式サイトをご確認ください。
2026年8月25日時点では、厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」に、労務提供上の支障がある場合・業務上の秘密が漏洩する場合・競業により自社の利益が害される場合・自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合の4つが挙げられています(厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」)。
4類型を1つずつ自分の副業に当てはめて確認しましょう。
本業の仕事に支障が出る場合
労務提供上の支障とは、副業により本業の勤務に穴が開く状態を指す類型です。
深夜のシフト勤務や、終業後に長時間の実労働が続く働き方は該当しやすくなります。
判断の軸は働く時間帯と翌日の勤務への影響です。
時間数だけで機械的に決まるものではなく、最終的な線引きは個別事情により変わります。
会社の秘密が漏れるおそれがある場合
業務上の秘密が漏れるおそれがある場合も、会社は副業を制限できます。
本業で扱う顧客リストや設計データを、そのまま副業先の仕事に使う働き方が典型例です。
同業種でのコンサルティングや執筆も、社内資料を根拠にすると業務で知った情報の持ち出しと見なされます。
素材の出どころを分けてください。
公開情報だけで完結する副業なら、この類型には触れにくくなります。
会社の名誉や信用を損なう場合
会社の名誉や信用を損なう行為も、制限の対象になります。
勤務先の社名を出して商品を売る、勤務先が特定できる形で発信する、といった働き方が当たりやすい例です。
勤務先の看板を利用して集客する副業は、信頼関係を壊す行為と評価されることがあります。
社名も業務内容も出さない活動であれば、この類型に該当する場面は限られます。
発信の受け取られ方は個別に判断されるものと考えておきましょう。
競合他社の利益になる場合
競業により会社の利益を害する場合も、制限が認められます。
本業と同じ商材を扱う他社で働く、同じ顧客層へ自分で営業をかける、といったケースが該当しやすい例です。
取引先が重なるほど本業の売上を直接奪う関係と見られやすいので、客層と商圏を先に確認してください。
同ガイドラインは、競業避止義務について、正当な利益が侵害されない場合には同一の業種・職種であっても副業・兼業を認めるべき場合も考えられるとしています。
同業というだけで一律に禁止されるわけではありません。
「副業禁止」と書いてあれば副業はできない?
就業規則に「副業禁止」と書いてあっても、それだけですべての副業が禁じられるわけではありません。
裁判例では、兼業を全面的に禁止する規定は特別な場合を除き合理性を欠くと判断されました。
規定の効力がどこまで及ぶのか、4つの角度から確認しましょう。
就業時間外の時間は本来労働者のもの
就業時間外の時間は、本来労働者が自由に使える時間です。
労働契約で会社に提供しているのは所定の労働時間内の労務であり、退勤後や休日の過ごし方まで当然に会社の指揮下へ入るわけではありません。
厚生労働省のガイドラインも、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは基本的に労働者の自由であるという裁判例の考え方を示しています。
規定があるかどうかではなく、自由を制限する理由があるかどうかで効力を考えてください。
全面禁止の規定は合理性を欠くとされている
兼業を全面的に禁止する規定は、特別な場合を除き合理性を欠くと判断されました。
2026年8月25日時点では、厚生労働省のポータルサイトが、小川建設事件(東京地決昭57.11.19 労働判例397号30頁)について「就業規則で兼業を全面的に禁止することは特別な場合を除き、合理性を欠く」と判断したと解説しています(厚生労働省「副業・兼業と労働条件」)。
規定さえあれば理由を問わず処分できるわけではありません。
実際に懲戒や解雇が有効となるかは、4類型に当たるかで個別に判断されます。
就業規則の文言が強いというだけで、副業そのものを諦める必要はありません。
許可制・届出制の規定は有効とされている
一方で、会社の許可や届出を求める規定そのものは有効とされています。
同じ小川建設事件は、労務提供上の支障や企業秩序への影響等を考慮したうえで会社の承諾にかからしめる旨の規定を就業規則に定めることは不当とはいいがたい、と判断しました。
厚生労働省のポータルサイトは、この判断が後の裁判例でも同じであると解説しています。
なお同事件では、結論として解雇は無効ではないと判断されました。
就業規則は無視してよいという読み方は危険です。
会社が定める許可・届出の手続きは必ず踏んでください。
記載がなければ原則として副業できる
就業規則に副業を禁じる規定が見当たらない場合、原則として副業は可能と解釈されています。
厚生労働省のモデル就業規則も、勤務時間外に他の会社等の業務に従事できるという、副業を原則認める内容です。
ただし規定がないという事実だけを根拠にするのは解釈にとどまります。
服務規律や秘密保持の条項が実質的に副業を制約する場合もあります。
判断に迷うときは、人事や総務へ確認したうえで進めてください。
確認したやり取りを記録に残しておくと、後から食い違いが起きたときの説明もしやすくなります。
就業規則で副業の扱いを確認する方法
就業規則で副業の扱いを確かめる場所は、服務規律と懲戒の2つの章です。
次の順に読み進めると、自分が取るべき手続きまで一度に把握できます。
- 服務規律・遵守事項の条文
- 懲戒と退職の条文
- 許可制か届出制かを示す語尾
- 禁止される副業の内容
- 規則が手元にないときの確認先
順に確認し、自分の副業が制限の対象になるかを切り分けていきましょう。
服務規律や遵守事項の章を見る
副業の扱いが最初に書かれているのは、服務規律や遵守事項の章です。
「会社の許可なく他に雇われ、または自ら事業を営んではならない」といった条文を探してください。
章の名前は会社ごとに違うので、次の言葉を目次から拾うと早く見つかります。
- 服務規律
- 遵守事項
- 兼業、二重就職
- 副業、他社への就労
あわせて総則の適用範囲の条文も読み、自分の雇用形態にその規則が及ぶかを確かめましょう。
パート・契約社員には別の就業規則が用意されている会社もあるので、正社員向けの規則だけで判断しないでください。
懲戒や退職の章もあわせて見る
服務規律の条文を見つけたら、懲戒の章で違反したときの扱いも続けて確認します。
無許可の兼業が譴責や減給、重い場合は懲戒解雇の事由として並んでいないかを見てください。
退職の章に競業避止の定めを置く会社もあり、在職中だけでなく退職後の制限まで書かれている場合があります。
ただし、規定があること自体が処分の有効性を決めるわけではありません。
実際の判断は労務提供上の支障などの実質で個別に見られるので、条文の重さだけで諦める必要はありません。
処分の種類と対象になる行為をセットでメモしておくと、後の手続きで役立ちます。
許可制か届出制かを見分ける
条文の語尾を見れば、許可制か届出制かは見分けられます。
許可制は会社の承諾がないと始められず、届出制は届け出れば始められるという違いです。
「会社の許可を受けなければならない」と書かれていれば許可制と考えてください。
「あらかじめ届け出るものとする」とあれば届出制で、承諾を待たずに開始できます。
厚生労働省のモデル就業規則第70条は「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。」と定めた、原則自由の形です。
どの型かで踏むべき手続きの重さが変わるので、動き出す前にここを特定しましょう。
禁止される副業の内容を読み取る
禁止の対象は無制限ではなく、読み取るべきは会社が制限できる4つの類型です。
条文に並ぶ禁止事由を、次の4類型に照らして一つずつ突き合わせてください。
- 本業の労務提供に支障が出る働き方
- 業務上の秘密が漏れるおそれ
- 会社の名誉や信用を損なう行為
- 競業により会社の利益を害する行為
※2026年8月時点の情報です。最新の内容は各公式サイトをご確認ください。
2026年8月25日時点では、モデル就業規則第70条第2項にも、この4つが禁止・制限できる場合として並んでいます(厚生労働省「モデル就業規則」)。
深夜に及ぶ長時間の副業や競合他社での就労は支障が生じやすいので、慎重に見極めましょう。
4類型のどれにも当たらないと言えるなら、あとは自社の手続きに沿って進める形になります。
就業規則が手元にないときは会社に閲覧を求める
就業規則が手元にない場合は、会社に閲覧を求めましょう。
人事や総務の担当者に「就業規則を確認したいので、閲覧させていただけますか」と伝えてください。
社内のイントラネットや共有フォルダに掲載している会社もあるので、先に検索すると早いでしょう。
規則を読めたら、許可制か届出制か、禁止事由は何かをメモに残してください。
申請前に自分の副業を4類型へ当てはめて整理しておくと、手続きが早く進みます。
副業の種類ごとに制限の受けやすさは変わる
副業の種類ごとに、受ける制限の強さは変わります。
もっとも制限を受けやすいのは、他社に雇われて働く形の副業です。
| 副業の形態 | 触れやすい類型 | 労働時間の通算 | 確認すべき点 |
|---|---|---|---|
| アルバイト・パート | 労務提供上の支障 | あり | 勤務時間帯と週の合計時間 |
| 業務委託・在宅ワーク | 秘密漏洩・競業 | なし | 受注先が同業かどうか |
| フリマ・ポイ活 | 当てはまりにくい | なし | 就業規則の副業の定義 |
| ブログ・SNS | 名誉信用の毀損 | なし | 勤務先が特定される発信か |
| 株式投資・不動産 | 当てはまりにくい | なし | 定義と規模の記載 |
※2026年8月時点の情報です。最新の内容は各公式サイトをご確認ください。
自分の副業がどの行に当たるかを確かめたうえで、形態ごとの注意点を押さえましょう。
アルバイト・パートは制限を受けやすい
アルバイトやパートは、5つの形態でもっとも制限を受けやすい副業です。
労働基準法第38条第1項により、事業主が異なる職場で働く場合は労働時間が通算されます。
本業と副業を合算した時間が長くなると、翌日の本業に支障が出る働き方とみなされやすくなります。
深夜に及ぶ長時間の掛け持ちは、労務提供上の支障と評価されやすくなります。
シフトの時間帯と週の合計時間を、契約前に確認しましょう。
業務委託・在宅ワークは内容次第
業務委託や在宅ワークは、仕事の内容しだいで扱いが分かれます。
ガイドラインは、フリーランスなど労働基準法が適用されない働き方について労働時間は通算されないとしています。
ただし本業と同じ分野の仕事を受けると、競業の類型に触れます。
勤務先の顧客や取引先から直接受注する形は、業務上の秘密の漏洩とも結び付きやすい働き方です。
受注先が同業でないか、本業で得た情報を使わずに完結する仕事かを確かめましょう。
フリマ・ポイ活は副業に当たらない場合がある
不要品のフリマ出品やポイ活は、そもそも副業に当たらないと扱われる場合があります。
判断を分けるのは、就業規則が副業をどう定義しているかという点です。
他の会社等の業務に従事することを副業と定める規定なら、私物の売却は該当しにくくなります。
仕入れて反復継続的に売る形は事業とみなされる余地があるので、規模が大きくなる前に規定を読み返してください。
下記の記事にて収入が増えたときの税の扱いをまとめているので、併せて読んでみてください。
副業で20万以上稼ぐと所得税の確定申告義務が発生し、正しく申告しないと無申告加算税や延滞税といったペナルティを受ける可能性があります。一方で、経費の計上や青色申告の活用により課税所得を大幅に減らせるケースも少なくありません。本記事では[…]
ブログ・SNSは発信内容に注意が要る
ブログやSNSは、発信の中身が名誉信用の毀損に触れないかが分かれ目になります。
労働時間は通算されず、更新の時間帯も自由です。
ただし勤務先が特定できる形での内部事情の発信は、会社の信用を損なう行為と判断されやすくなります。
社名や取引先名を出さない、本業で知った情報を書かないという2点を守ってください。
広告収入の有無だけで可否が決まるわけではありません。
株式投資・不動産は就業規則の定義を確認する
株式投資や不動産賃貸は、資産運用として副業の対象外とする会社もあり、制限を受けにくい形です。
労働時間の通算もありません。
ただし就業規則の副業の定義に投資が含まれるかで扱いが変わるので、規定の文言を先に確認してください。
不動産は戸数や賃貸収入の規模が大きくなると、許可や届出を求められる場合もあります。
勤務時間中に取引を繰り返す行為は、労務提供上の支障に当たると判断されかねません。
雇用される副業は本業と労働時間が通算される
雇用されて働く副業は、本業と労働時間が通算されます。
労働基準法第38条第1項は「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」と定めています。
どこまで働けるのかを先に把握しておきましょう。
通算されるのは事業主が異なる雇用契約の場合
労働時間が通算されるのは、事業主を異にする複数の事業場で雇用されて働く場合です。
ガイドラインは、「事業場を異にする場合」に事業主を異にする場合も含まれるとしています。
アルバイトやパートとして別の会社と雇用契約を結ぶ副業が、通算の対象です。
一方でフリーランスや起業、顧問といった労働基準法が適用されない働き方は、通算されません。
自分の副業がどちらの契約なのかを、契約書の名称で確かめてください。
所定労働時間は契約した順に通算する
所定労働時間は、労働契約の締結の先後の順に通算します。
所定外労働時間については、実際に所定外労働が行われた順に通算する扱いです。
本業に後から副業を足した場合、通算で法定の枠を超える部分は、後から契約した副業先の側で生じたものとして整理されます。
契約の順序が、どちらの会社の時間外労働として扱われるかを左右するので、副業先との契約日を控えておいてください。
上限を先に決める管理モデルという方法がある
厚生労働省は、通算の簡便な方法として管理モデルを示しています。
対象になるのは、先に契約した会社での法定外労働時間と、後に契約した会社での労働時間の合計です。
その合計が単月100時間未満・複数月平均80時間以内となるよう、副業の開始前に各社があらかじめ上限を設定します。
自分がどの枠まで働けるのかを、副業を始める前に確かめてください。
副業先の勤務予定を会社へ申告し、決められた枠の中で働きましょう。
休憩・休日・有給は通算されない
休憩・休日・年次有給休暇は、労働時間に関する規定ではないことから通算されません。
副業先で休憩を取っても本業の休憩には振り替えられず、有給も各社の勤続に応じてそれぞれ発生します。
休息の総量は自分で確保するしかありません。
睡眠時間を削らない範囲で組み立ててください。
一方で労災保険は、2020年9月1日から施行された改正により、複数事業労働者の給付基礎日額が各社の賃金を合算して算定されることになりました。
2026年8月25日時点では、この取り扱いが厚生労働省の解説資料で確認できます(厚生労働省「複数事業労働者への労災保険給付」)。
本業と副業の賃金を合算した額を基礎に算定されるため、掛け持ちでも補償が目減りしにくくなっています。
公務員は法律で副業が制限される
公務員の副業は、会社の就業規則ではなく法律そのもので制限されます。
民間向けの4類型をそのまま当てはめて動くと、無許可の兼業として問題になるおそれがあります。
根拠となる条文と手続きを、順に確認しましょう。
国家公務員は営利企業の役員兼業と自営兼業が制限される
国家公務員は、営利企業の役員を兼ねることや自ら営利企業を営むことが、国家公務員法第103条で制限されています。
2026年8月25日時点では、人事院の資料が、役員兼業は名義のみであっても該当し、報酬の有無も問わないと説明しています(人事院「兼業の制限(国公法第103条・第104条)」)。
就業規則で許可制を敷く民間企業とは、そもそもの出発点が違います。
会社を設立して事業を行う、家業の会社の役員に名を連ねるといった形は制限の対象に入り得るので、着手する前に所属先へ確認してください。
報酬を得る事業は許可が要る
報酬を受け取って事業や事務に従事するときは、事前の許可が要ります。
定めているのは国家公務員法第104条です。
報酬を得て営利企業の役員等以外の兼業を行う場合に、内閣総理大臣及び所轄庁の長の許可が必要とされています。
無許可のまま報酬を受け取ると、手続き違反として扱われるおそれがあります。
金額が小さいから問題ないと自分で判断せず、副業の内容と報酬の有無を所属先の窓口へ正確に伝えましょう。
地方公務員は任命権者の許可が要る
地方公務員も、副業には任命権者の許可が必要とされています。
根拠として挙げられるのが地方公務員法第38条です。
営利企業の役員等を兼ねること、自ら営利企業を営むこと、報酬を得て事業や事務に従事することが、許可なしには行えないとされています。
許可の基準は自治体ごとに定められており、内容は一律ではありません。
実際の可否は条文と所属自治体の規程で確かめてください。
民間の裁判例はそのまま当てはまらない
民間の裁判例やモデル就業規則の考え方は、公務員にそのまま当てはまりません。
全面禁止規定の合理性が争われた小川建設事件も、私企業の労働者と会社との間で判断された事案です。
4類型に当てはめて問題なしと考えても、公務員はその手前で法律による制限を受けます。
許可の要否や申請先は職種・所属ごとに違うので、所属先の規程と人事担当への確認を先に済ませてください。
確認が取れてから、副業の内容と働き方を具体化しましょう。
就業規則に反して副業をするとどうなる?
就業規則に反して副業をしても、規定違反という事実だけで直ちに解雇になるとは限りません。
ただし無断のまま続けて本業に支障が出た場合、解雇が有効と判断された裁判例もあります。
処分の重さがどこで分かれるのかを、順に確認しましょう。
規定違反だけで直ちに解雇にはなりにくい
就業規則の副業禁止規定に反しても、違反という事実だけで解雇が認められるわけではありません。
ガイドラインは、形式的に就業規則の規定に抵触したとしても、職場秩序に影響せず労務提供に支障を生ぜしめない程度・態様のものは禁止違反に当たらないとし、懲戒処分を認めていない裁判例を紹介しています。
問われるのは規定の文言ではなく、副業の中身が本業や会社にどう影響したかです。
厚生労働省も、就業規則の規定を拡大解釈して必要以上に副業・兼業を制限しないよう求めています。
規則にあるから処分できる、と会社が言い切れる場面は限られると考えてください。
解雇が有効とされた事例もある
一方で、無断の副業を理由とする解雇が有効と判断された裁判例もあります。
厚生労働省のポータルサイトが解説する小川建設事件(東京地決昭57.11.19 労働判例397号30頁)では、結論として解雇は無効ではないと判断されました。
同事件は、会社の承認を得ないまま在籍のまま他に雇われたときに懲戒処分をするという就業規則の規定について、合理性を有すると判断しています。
無断のまま働き続ける危うさが示された事案です。
許可制や届出制の手続きを飛ばさないでください。
処分の重さは本業への影響で判断される
処分の重さを分けるのは規定の有無ではなく、副業が本業に与えた影響の大きさです。
ガイドラインが示す禁止・制限の4類型のうち、実務で争点になりやすいのが労務提供上の支障の有無になります。
勤務時間外の短時間の作業にとどまり、遅刻や欠勤も起きていないなら、重い処分の根拠は弱いと考えてください。
逆に、睡眠を削る働き方で本業の勤務に穴が開く状態は、支障そのものと評価されます。
業務上の秘密の漏洩や競業が重なれば、影響はさらに重く見られます。
雇用される副業は手続き上わかる場面がある
アルバイトのように雇用されて働く副業は、手続きの過程で会社に伝わる場面があります。
根拠となるのが、事業主の異なる複数の事業場の労働時間を通算して管理する労働基準法第38条第1項の定めです。
厚生労働省は簡便な方法として、副業の開始前に各社が労働時間の上限を決める管理モデルも示しています。
労災でも、複数事業労働者として本業と副業の賃金を合算し、給付基礎日額を算定する扱いです。
無断で始めず、届け出て通算の手続きに乗せる形で進めてください。
制限のある会社で副業を進める手順
制限のある会社で副業を進める手順は、4類型に当たらない副業を選び、会社の手続きを先に踏むという2段構えです。
順番が逆になると、無断で始めた事実だけが記録に残ってしまいます。
選び方から相談先まで、5つの段階を順に確認してください。
4類型に当たらない副業を選ぶ
選ぶ段階で外すのは、労務提供上の支障・業務上の秘密漏洩・会社の名誉信用の毀損・競業という4類型に触れる仕事です。
同業種で同じ顧客層を相手にする仕事は競業に当たりやすいので、候補の段階で外してください。
稼働時間の目安に迷うときは、本業の所定労働時間と睡眠を確保したうえで残る枠を基準にしましょう。
深夜に及ぶ長時間の稼働は労務提供上の支障とみなされやすくなります。
本業と業種が離れ、就業時間外の短い時間で完結する仕事を選んでください。
申請・届出の内容を整理する
申請書や届出で会社が知りたい項目は、おおむね決まっています。
- 副業先の名称と所在地
- 担当する業務の内容
- 契約形態(雇用か業務委託か)
- 1週間あたりの見込み稼働時間
契約形態と見込み稼働時間の2つは、会社側の労働時間管理に直結する項目です。
雇用契約であれば労働時間の通算という管理が会社側に生じるので、契約の形は先に伝えておいてください。
業務内容も、競業に当たらないと読み手が判断できる粒度まで書き添えましょう。
会社が迷いそうな点を先回りして書いておくと、確認のやり取りがスムーズになります。
本業に支障が出ない時間配分にする
時間配分は、本業の所定労働時間と睡眠を先に確保し、残った枠を副業に充てる順番で決めてください。
副業が雇用契約なら、事業主が異なる複数の会社の労働時間は通算して管理されます。
厚生労働省が示す管理モデルでは、単月100時間未満・複数月平均80時間以内に収まるよう、各社があらかじめ上限を設定します。
上限の考え方を先に把握しておくと、申請書に書く見込み時間も現実的な数字になるでしょう。
本業の繁忙期に納期が重なる副業は、稼働の読みが外れやすいので慎重に選んでください。
相談先が見つからないときは窓口を頼る
相談先が見つからないときの最初の窓口は、社内の人事・総務です。
就業規則の原本と実際の運用を把握している部署なので、許可の基準や過去の承認例を直接確認できます。
社内で答えが得られない場合は、行政の労働相談窓口を頼ってください。
規則の解釈に迷ったまま無断で始めるのが、もっとも危ない選択です。
社内、次いで行政という順で相談しましょう。
相談した日付と回答の内容は、簡単な記録として残しておくと後の確認に役立ちます。
規則の改定時期をあわせて確認する
就業規則は改定されるので、手元にある版が最新かどうかを申請前に確認してください。
厚生労働省のモデル就業規則は、勤務時間外に他の会社等の業務へ従事できるという原則容認の内容です。
2026年8月25日時点では、経団連が2022年に公表したアンケート調査で、回答企業の70.5パーセントが社員の社外での副業・兼業を「認めている」53.1パーセントまたは「認める予定」17.5パーセントと回答したことが確認できます(経団連「副業・兼業に関するアンケート調査結果」)。
数年前のコピーで判断すると、現在の規定と食い違うおそれがあります。
改定日と最新版の入手先を人事に確認したうえで、申請の準備を進めましょう。
就業規則は4類型で読み解き、手続きを踏んで副業を始めよう
就業規則が副業を制限できるのは、労務提供上の支障・秘密漏洩・名誉信用の毀損・競業という4類型に当たる範囲までです。
雇用型か請負型かなど働き方ごとに引っかかりやすい類型は変わるので、自分の副業を当てはめて確かめてください。
4類型に触れないと判断できたら、会社が定める許可制や届出の手続きを踏んだうえで進めましょう。
手続きを飛ばして無断で始めることが、いちばん危ない選択です。
判断に迷う場合は、勤務先の人事や社会保険労務士などの専門家に確認するのが確実です。
※最新の制度は厚生労働省の公式サイトをご確認ください。


