公務員の副業に、いくらまでという一律の金額上限はありません。
できる範囲は許可がいらない範囲・許可を得ればできる範囲・許可を得ても認められない範囲の3層で決まります。
判定を誤ったまま始めると、懲戒処分の対象になりかねません。
とはいえ最終的な線引きは、自分の任命権者が定める兼業の規程で確かめてください。
そのため公務員が副業できる範囲を、法令と実際の運用をもとに整理しました。
ぜひ参考にしてください。
公務員が副業できる範囲は3つに分かれる
公務員が副業できる範囲は、3層に分かれます。
許可がいらない範囲・許可を得ればできる範囲・許可を得ても認められない範囲です。
まず自分の副業がどの層に入るかを、次の表で確かめましょう。
| 層 | 代表例 | 根拠となる決まり | 確認先 |
|---|---|---|---|
| 許可がいらない | 単発の講演・原稿執筆、資産運用 | 国家公務員法第104条の兼業に当たらない扱い | 所属庁の服務担当 |
| 許可を得ればできる | 規模基準を超える不動産賃貸、地域貢献活動 | 国家公務員法第103条・第104条/地方公務員法第38条 | 任命権者(人事課等) |
| 許可を得ても不可 | 職務専念義務・信用失墜に触れる働き方 | 地方公務員法第33条・第34条・第35条 | 任命権者の規程 |
※2026年8月時点の情報なので、最新の内容は各公式サイトをご確認ください。
2026年8月25日時点で、人事院が公表する資料を確認済みです。「兼業の制限(国公法第103条・第104条)」に、説明があります。
承認または許可を得た場合でなければ兼業を行うことはできない、という内容です(人事院「兼業の制限」)。
表で位置を確かめたら、層ごとの中身を1つずつ押さえていきましょう。
許可がなくてもできる範囲
報酬を受け取っても許可がいらない範囲は、単発の依頼に限られます。
たとえば国家公務員が単発で講演を依頼された場合です。
同様に研究成果を雑誌等に単発で発表した場合も、同じ扱いになります。報酬を得ても、国家公務員法第104条の兼業に該当しません。
ただし依頼元が利害関係者であるときは、あらかじめ倫理監督官の承認が必要になります。
そのため依頼元を、先に確かめてください。
また本省課長補佐級以上の職員には、別の決まりもあるでしょう。講演料や原稿料等の報酬が5,000円を超える場合、原則として贈与等報告書の提出を求められます。
なお同じ依頼を継続的に受ける形なら、単発とは扱われない可能性もあるでしょう。
いずれにせよ線引きは、所属の服務担当に確認してください。
許可を得ればできる範囲
許可を得ればできる範囲の代表は、規模基準を超える不動産賃貸と地域貢献活動です。
たとえば人事院規則14-8の運用通知は、独立家屋5棟以上を「自営」の基準としています。
独立家屋以外の建物は、独立的に区画された部分が10室以上です。そして土地は、契約件数10件以上が基準になります。
基準に当たる規模は自営として扱われ、承認を得ないままでは続けられません。
他方、地域貢献活動については許可基準を明文化して公表する自治体が出てきました。
申請の様式や提出時期は勤務先ごとに違うので、人事担当に早めに問い合わせましょう。
許可を得ても認められない範囲
公務員としての義務に触れる場合、許可を得ても認められません。
地方公務員法第35条には、定めがあります。勤務時間と職務上の注意力のすべてを、職責の遂行に用いる内容です。
ゆえに勤務時間中の作業は、許可の対象になりません。睡眠を削って翌日の公務に支障が出る働き方も、同じです。
加えて第33条の信用失墜行為の禁止や、第34条の守秘義務もあります。触れる副業は報酬の多寡と関係なく認められないと考えてください。
そのうえ規模が大きくなるほど、自ら営利企業を営む行為と判断されやすくなります。
この点にも、注意しましょう。
範囲を決めるのは法令と任命権者
範囲を最終的に決めるのは、法令の枠と任命権者の規程の2つです。
国家公務員は国家公務員法第103条・第104条が、原則禁止と許可制の枠を定めています。
一方、地方公務員の場合は地方公務員法第38条が根拠です。
ところが法令に「いくらまでなら副業してよい」という一律の収入上限はないと分かります。
だから金額ではなく、許可の要否から確認しましょう。
もちろん許可の判断基準や申請の様式は、任命権者の規程ごとに異なります。
勤務先の服務規程と人事担当への確認を、最優先にしてください。
許可がなくてもできる副業の範囲
許可がなくても認められるのは、報酬を得て事業や事務に従事することに当たらない活動です。
例えば株式や投資信託の運用、規模基準を下回る不動産の賃貸が代表例になります。
不用品の売却、単発の講演や執筆も同じ扱いです。
線引きは所属ごとの規程で変わるので、4つの範囲をそれぞれ確認してください。
株式や投資信託などの資産運用
株式や投資信託などの資産運用は、原則として許可を要しない範囲に入ります。
国家公務員法第103条が禁じるのは、営利企業の役員兼業と自営兼業です。
一方、第104条が許可制にしているのは、報酬を得て事業や事務に従事する場合になります。
つまり手持ちの資金を自分で運用する行為は、そのどちらにも当たらないという整理です。
ただし勤務時間中の売買は職務専念義務に触れるので、取引は勤務時間外に行いましょう。
しかも職務上知り得た情報をもとに、売買する形もあります。地方公務員法第34条の守秘義務にも、抵触しかねません。
下記の記事にて株式投資と副業の関係をまとめているので、併せて読んでみてください。
株式投資は、法律上副業ではなく資産運用に分類されます。そのため副業禁止の会社に勤めていても原則問題ありません。しかし、注意したい点もあります。何も知らずに株を始めると、税金の申告漏れや会社バレにつながることもあるのが実情です。トラブルを[…]
規模基準を下回る不動産の賃貸
不動産の賃貸は、規模が一定より小さければ「自営」に当たらない扱いです。
人事院規則14-8の運用通知は、独立家屋なら5棟以上を自営の基準としています。
次に独立家屋以外の建物なら、独立的に区画された部分が10室以上です。
また土地は、契約件数10件以上が同じく基準になります。
よって基準を下回る規模であれば、承認を得ずに賃貸を続けられるという整理です。
たとえば相続した実家を1軒だけ貸すような形になります。多くの場合、この範囲に収まるでしょう。
ところが棟数や室数がひとつでも基準に届けば承認の対象になります。
物件を増やす前に、規模を試算してください。
不用品の売却やフリマアプリ
自宅の不用品をフリマアプリで売るなら、許可のいらない範囲に入ります。
というのも不要になった衣類や家電を手放す行為にすぎません。反復して利益を狙う営利事業とは、性質が違うのです。
線引きが問われるのは、売るために仕入れ、継続して利益を上げる転売に踏み込んだときでしょう。
仕入れを伴う継続的な販売は、自ら営利企業を営む行為と見られます。
単発の不用品売却との違いを、意識してください。
単発の講演や執筆で報酬を得る場合
単発の講演や執筆で報酬を受け取る場合、国家公務員では許可が不要とされています。
例えば単発的に、講演を依頼された場合です。研究成果等を雑誌等に単発的に発表した場合も、対象になります。
いずれも国家公務員法第104条の兼業に該当しないという扱いでしょう。
もっとも依頼元が利害関係者であるときは、あらかじめ倫理監督官の承認が必要です。
依頼元の立場を、先に確かめてください。
さらに本省課長補佐級以上の職員にも、決まりがあります。講演料や原稿料等の報酬が5,000円を超える場合の扱いです。原則として、贈与等報告書の提出を求められます。
一方、地方公務員は自治体ごとに扱いが分かれるので所属の服務担当に確認しましょう。
許可を得ればできる副業の範囲
許可を得ればできるのは、公務への支障が小さい活動です。
同様に営利性や中立性の問題が生じにくい形も、同じ扱いになります。
不動産の賃貸や家業の手伝い、農業、地域貢献活動などが、その代表です。
承認の対象になりやすい5つの活動を、順に確認しておきましょう。
規模基準を超える不動産の賃貸
相続などで規模基準を超えてしまった不動産賃貸は、承認を受ければ続けられる余地があります。
人事院規則14-8の運用通知が示す「自営」の基準を見てみましょう。
独立家屋5棟以上、独立家屋以外の建物は独立区画10室以上、土地は契約件数10件以上です。
さらに賃貸料収入が年額1,000万円以上の場合も、自営に当たります。
ただし建物の賃貸のみを行う場合は、扱いが変わるのです。床面積の合計が600平方メートル未満ならこの収入基準からは除かれます。
他方で、注意したい点もあります。承認を得ないまま基準を超えると、法令違反として扱われるおそれがあります。
いずれにせよ超える前に、任命権者へ相談しましょう。
家業の手伝い
家業の手伝いは、報酬を受け取る形であれば許可の対象です。
地方公務員法第38条にも、定めがあります。報酬を得て事業や事務に従事する場合は、任命権者の許可が必要です。
そこで勤務時間外で公務に支障が出ない範囲かどうかが、許可を判断する軸になります。
加えて家業が営利企業にあたるケースもあるでしょう。その場合、役員の地位を兼ねることは名義のみでも禁止されています。
肩書きの扱いには、注意してください。
手伝う頻度や報酬の目安は規程ごとに異なるので、申請の前に人事担当へ確かめましょう。
小規模な農業
規模が小さく自家消費が中心の農業なら、自営には当たりません。
実は人事院の資料で農業や酪農、果樹栽培、養鶏が自営とされる場合もあります。
大規模に経営され、客観的に営利を主目的とすると判断されるケースです。
よって大規模かどうかと、営利が主目的かどうかの2点が線引きの軸になります。
直売所での販売を増やすなど経営を広げる前に、自分の職場の基準を確認してください。
事業としての性格が強まった段階では、あらためて承認の申請が必要になるでしょう。
地域貢献活動やNPOでの活動
地域貢献活動やNPOでの活動は、許可の基準を明文化する自治体が出てきた分野です。
総務省が公表した地方公務員の兼業に関する資料を見てみましょう。
許可基準の考え方として、次の3点が挙げられています。
- 公務の遂行に支障が生じないこと:週休日、年次有給休暇等を活用すること
- 職務の公正を確保できること:兼業先が非営利団体であること
- 職務の品位を損ねるおそれがないこと:報酬が社会通念上相当であること
※2026年8月時点の情報なので、最新の内容は各公式サイトをご確認ください。
2026年8月25日時点では、同じ資料に神戸市の地域貢献応援制度の記載もあります。
活動開始予定日の1か月前までに所属長の承認を得て人事課へ許可申請書等を提出する運用という内容です(総務省「地方公務員の社会貢献活動に関する兼業について」)。
さらに同資料は、ほかの自治体にも触れています。長野県、福井県、奈良県生駒市、宮崎県新富町にも兼業促進制度があるのです。
いずれにせよ勤務先の自治体に同種の制度がないか、調べてください。
知識や技能をいかした兼業
職員が持つ知識や技能をいかした兼業は、承認の枠組みが新しく整えられた分野です。
人事院は令和7年12月19日付で、人事院規則14-8の運用通知を改正しました。
そこで知識・技能をいかした自営兼業に承認基準を新設したのです。
同じく社会貢献に資する自営兼業についても、同じ改正で承認基準が設けられました。
いずれも新設されたのは承認の基準であり、申請なしで始められる仕組みではありません。
2026年8月25日時点では、兼業の扱いを整理した資料も公表されています。
「一般職の国家公務員の兼業について(Q&A集)」という資料です(内閣人事局・人事院「一般職の国家公務員の兼業について(Q&A集)」)。
対象となる活動と申請の要否は、担当部署に確認してください。
許可を得ても認められない副業の範囲
申請しても認められないのは、営利企業を営む形になる副業です。
同様に職務の信用や中立性を損なう副業も、同じ扱いになります。
許可制の枠の外にある働き方なので、収入がどれほど小さくても通りません。
範囲外と判断されやすい4つの型を、順に確認しましょう。
営利企業の役員や自ら営む事業
営利企業の役員・顧問・評議員を兼ねる形もあります。国家公務員法第103条が禁じる、役員兼業です。
人事院の資料は、名義のみであっても役員兼業に該当し、報酬の有無も問わないと説明しています。
しかもこの規定に違反して営利企業の地位についた場合、刑事罰が科されることがあります。
同じく地方公務員も、地方公務員法第38条の対象になります。私企業を営む場合は、任命権者の許可が必要です。
ゆえに起業を伴う副業を考えるなら、動き出す前が肝心になります。自分の任命権者の規程で、扱いを確かめましょう。
継続的な転売やせどり
継続的に仕入れて売る転売やせどりは、規模が大きくなるほど自ら営む事業と評価されます。
判断の分かれ目になるのは、1回あたりの利益ではありません。
むしろ取引が続いた期間と、積み上がった総額です。
実は人事院の資料も、自営業一般として小売を国家公務員法第103条の対象に挙げています。
単発の不用品売却と、仕入れを伴う反復的な販売は同じ扱いになりません。
取引が積み上がるほど、許可の可否を論じる以前の問題になります。
線引きを、甘く考えないでください。
職務上知った情報を使う仕事
職務上知り得た情報を材料にする仕事は、許可の対象になりません。
地方公務員法第34条は職務上知り得た秘密を漏らすことを禁じており、退職後も適用される義務です。
例えば担当業務の内部資料や非公開データをもとに記事や助言を提供する形もあります。
この場合は副業の可否を問う前に、守秘義務違反の問題になるでしょう。
公開情報だけを使うつもりでも、担当業務と重なるテーマは避けてください。
地方公務員法第33条が定める信用失墜行為にも、触れるおそれがあります。扱う題材は、慎重に選びましょう。
職務と利害関係のある相手からの仕事
許認可や発注、指導の相手方から報酬を受け取る場合、職務の中立性を疑われるため範囲外です。
もちろん国家公務員の場合、単発の講演や雑誌等への寄稿は第104条の兼業に当たりません。
したがって許可も、要らないのです。
けれども依頼元が利害関係者であるときは、あらかじめ倫理監督官の承認が必要になります。
加えて本省課長補佐級以上の職員には、別の扱いもあるでしょう。講演料や原稿料等の報酬が5,000円を超えると、贈与等報告書を提出します。
同じ内容の仕事でも、依頼元が誰かで結論が変わります。
引き受ける前に、相手と職務の関係を確認してください。
副業はいくらまで・何時間までできる?
副業の上限額や上限時間を一律に定めた法令はありません。
よく引用される数字は、稼いでよい上限ではないのです。
むしろ承認が必要な「自営」に当たるかどうかの判定基準になります。
金額と時間、それぞれの考え方を順に確認してください。
法令に一律の上限額はない
国家公務員法第103条は、営利企業の役員兼業と自営兼業を制限しています。
実は人事院の資料も、役員兼業について同じ立場です。報酬の有無を問わず禁止されると説明しています。
つまり金額の多い少ないではなく、行為の類型そのもので線を引く仕組みです。
同じく同法第104条や地方公務員法第38条にも、定めがあります。報酬を得て事業や事務に従事するなら、許可が必要です。
「月5万円までなら自由」といった一律の金額基準は法令にありません。
確認の出発点は金額ではなく、許可が要る行為に当たるかどうかでしょう。
数字の基準は自営に当たるかの線引き
不動産や太陽光でよく挙がる数字は、「自営」に該当するかどうかを判定するための基準です。
人事院規則14-8の運用通知は、次の場合に自営に当たると定めています。
- 独立家屋の賃貸は5棟以上
- 独立家屋以外の建物は独立的に区画された部分が10室以上
- 土地の賃貸は契約件数10件以上
- 賃貸料収入が年額1,000万円以上(建物の賃貸のみを行う場合は、床面積の合計が600平方メートル未満であれば除く)
- 太陽光電気の販売は定格出力50キロワット以上
※2026年8月時点の情報なので、最新の内容は各公式サイトをご確認ください。
2026年8月25日時点では、これらの基準が人事院規則14-8の運用通知に定められています。
最終改正は、令和7年12月19日です(人事院規則14-8の運用について)。
その結果、基準に当たれば承認の手続きが要るという意味になります。
下回れば無条件に副業してよいという線ではない点に、注意してください。
報酬は社会通念上相当と認められる額まで
許可を得て働く場合の報酬は、社会通念上相当と認められる水準が目安になります。
総務省が地方公務員の兼業について示した資料も、同じ考え方です。
許可基準の考え方として、「報酬が社会通念上相当であること」が挙げられています。
ちなみに同資料が紹介する事例の報酬額には、幅があるのです。月額2〜3万円程度や、日額6千円〜1万円程度になります。
ところが金額だけで機械的に線を引く制度ではありません。
相当かどうかの判断は勤務先ごとに分かれるので、自分の任命権者の規程で確認しましょう。
時間は勤務時間外かつ公務に支障がない範囲
副業に使える時間の上限も、法令にはありません。
勤務時間外であることと公務に支障がないことの2点で判断します。
地方公務員法第35条は、職務専念義務を定めた条文です。勤務時間と職務上の注意力のすべてを、職責の遂行に用います。
この場合、勤務中に副業の連絡へ対応するだけでも職務専念義務に触れるのです。
だから時間帯の切り分けを、徹底してください。
しかも深夜の副業で翌日の公務に支障が出れば、勤務時間外でも問題になります。
総務省資料が挙げる許可基準にも、同じ条件がありました。週休日や年次有給休暇等を活用することが、条件の一つです。
国家公務員と地方公務員で違う範囲の決まり方
国家公務員と地方公務員では、根拠となる条文も許可を出す相手も異なります。
| 項目 | 国家公務員 | 地方公務員 |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 国家公務員法第103条・第104条 | 地方公務員法第38条 |
| 許可権者 | 内閣総理大臣及び所轄庁の長 | 任命権者 |
| 基準の所在 | 人事院規則14-8の運用通知 | 各自治体の規則・許可基準 |
| 確認先 | 所属庁の人事担当部署 | 人事課・職員向けポータル |
※2026年8月時点の情報なので、最新の内容は各公式サイトをご確認ください。
したがって地方は自治体ごとに基準が分かれるので、確認先も国とは別に押さえましょう。
国家公務員は人事院規則が基準になる
国家公務員のできる範囲は、国家公務員法第103条・第104条と人事院規則14-8で決まります。
第103条が制限するのは、営利企業の役員兼業と自営兼業です。
ちなみに人事院の資料は、報酬の有無を問わないとしています。
また報酬を得て他の事業や事務に従事する場合もあるでしょう。内閣総理大臣及び所轄庁の長の許可が、必要です。
判断の物差しは人事院規則14-8の運用通知でしょう。
不動産賃貸なら独立家屋5棟以上、独立家屋以外の建物は10室以上が自営の目安になります。
地方公務員は任命権者が許可を出す
地方公務員は、地方公務員法第38条により任命権者の許可を受けなければ兼業できません。
もちろん許可を出すのは人事院ではなく、自分が所属する自治体の任命権者です。
そのうえ第33条の信用失墜行為の禁止、第34条の守秘義務、第35条の職務専念義務も同時にかかります。
許可を取らずに収入を得れば、服務違反として処分の対象になりかねません。
順番を、逆にしないでください。
自治体ごとに基準が異なる理由
地方公務員法第38条は許可の要否を定めるだけで、許可の基準までは書かれていません。
そのため基準づくりは、各自治体に委ねられています。
同じ副業でも自治体ごとに可否が分かれます。
総務省が2019年4月1日時点で行った実態調査を見てみましょう。
許可基準を設定している団体は、1,788団体中703団体でした。うち353団体が、対外的にも公表しているとされています。
ちなみに制度を公表している自治体もあるのです。同資料は、神戸市を挙げています。長野県、福井県、奈良県生駒市、宮崎県新富町も同じです。
自分の勤務先がどちらに当たるかを、まず確かめてください。
自分の職場の規程を確認する方法
できる範囲の最終確認は、法令の条文ではなく自分の職場の規程で行いましょう。
はじめに確認先は、次の3つです。
職員向けポータルに載る服務規程と、人事課への照会になります。自治体サイトの兼業許可基準の公開ページも、確認先の一つです。
照会するときは、業務の内容、報酬の有無、勤務時間との重なりを整理して伝えましょう。
そうすれば、話が早く進みます。
この記事も法令の条文も、個別の案件の可否までは判断できません。
最終判断は、任命権者側に確かめてください。
なお確定申告や社会保険の扱いが絡む場合は、税理士等の専門家にも確認しましょう。
2026年4月に自営兼業の承認範囲が広がった
承認を受けられる自営兼業の範囲は、2026年4月に広がりました。
人事院が令和7年12月19日付で、人事院規則14-8の運用通知を改正したものです。
令和8年4月1日から施行されました。
はじめに見直しの柱は、次の3点です。
- 太陽光電気の販売について、承認が必要となる規模の基準を緩和
- 職員の有する知識・技能をいかした事業への承認基準を新設
- 社会貢献に資する事業への承認基準を新設
※2026年8月時点の情報なので、最新の内容は各公式サイトをご確認ください。
2026年8月25日時点では、令和8年4月1日からの施行が人事院の報道発表で確認できます(人事院「自営兼業制度の見直しについて」)。
とはいえ、押さえておきたい点もあります。原則禁止・許可制という枠組み自体は変わっていません。
順に確認してください。
太陽光発電の基準が緩和された
太陽光電気の販売は、設備の定格出力が50キロワット以上で「自営」に当たる扱いです。
人事院が公表した見直しの概要を見てみましょう。
承認が必要となる基準が10キロワット以上から50キロワット以上へ引き上げられました。
したがって定格出力が50キロワット未満の設備であれば、自営には該当しません。
その結果、小規模な発電設備を持つ職員にとっては手続き上の負担が軽くなります。
2026年8月25日時点では、この引き上げが人事院の見直し概要資料に図で示されています(人事院「自営兼業制度の見直しについて(概要)」)。
もっとも自営に当たらない場合でも、収入の扱いや所属先の規程は個別に確認しましょう。
知識や技能をいかした自営兼業が対象に
職員が持つ知識や技能をいかした事業について、新たな承認基準が設けられました。
人事院の概要資料は、事業のイメージも示した資料でしょう。ハンドメイド品の販売やスポーツ・芸術の教室です。
承認基準に含まれるのは、職員の官職と事業との関係になります。
特別な利害関係またはその発生のおそれがないことが、条件です。
そのうえ所得税法第229条の開業届を提出して行うことも、基準に入りました。事業計画書等を作成して行うことも、同じです。
新設されたのは承認の基準であり、申請なしで自由に始められる仕組みではありません。
けれど開始してから相談する順序では、無許可の兼業と扱われるおそれがあります。
だから事前に、担当部署へ相談してください。
社会貢献に資する自営兼業も対象に
社会貢献に資する事業についても、同じ改正で新たな承認基準が設けられました。
人事院の概要資料は、事業のイメージも挙げているのです。地域振興イベントの主催や高齢者を対象とした買物代行になります。
収益よりも地域や社会への貢献を目的とする活動が、対象でしょう。
もっとも改正されたのは、人事院規則14-8の運用通知です。直接の対象は、国家公務員になります。
地方公務員に同じ基準がそのまま適用されるわけではありません。
よって勤務先の自治体の規則を、確認してください。
副業が解禁されたわけではない
今回の見直しで、公務員の副業が解禁されたわけではありません。
解禁された=自由に副業できるという理解は誤りです。
変わったのは、承認基準の新設と対象事業の拡大にとどまります。
国家公務員法第103条・第104条や地方公務員法第38条にも、定めがあるのです。原則禁止・許可制の枠組みは、今も変わっていません。
おわりに報道や解説記事の見出しだけを見て、届出なしで始めてしまう判断は避けましょう。
副業の許可を申請するまでの手順
副業ができる範囲だと分かったら、申請までの流れは次の4ステップで進めます。
- 職場の服務規程を確認する
- 上司や人事担当に相談する
- 兼業許可申請書を作成する
- 審査を受けて承認後に始める
当然許可が下りるまで活動は始められないので、余裕をもって1つずつ進めてください。
職場の服務規程を確認する
最初に確認するのは、自分が所属する組織の服務規程と兼業許可の基準です。
たしかに根拠となる地方公務員法第38条や国家公務員法第103条・第104条は、全国で共通します。
けれども許可の判断基準や申請書式は、任命権者ごとに違いが出るのです。
総務省が2019年4月1日時点で行った実態調査でも、許可基準を設定している団体は約4割にとどまっていました。
ゆえに他の自治体の基準を、そのまま当てはめないでください。自分の任命権者が定める規程を読むところから、始めましょう。
その場合、人事担当に掲載場所を尋ねる方法もあります。
上司や人事担当に相談する
規程を読んだら、次は上司と人事担当への事前相談です。
総務省資料が紹介する神戸市の運用を見てみましょう。
所属長の承認を得て人事課へ許可申請書等を提出する流れになっています。
勤務時間や職務専念義務との関係は、書面では詰めにくい点です。兼業先が非営利団体かどうかや報酬の水準も、同じになります。
先に擦り合わせておきましょう。そうすれば、差し戻しを減らせます。
相談も申請もしないまま活動を始めると、許可を欠いた状態で従事することになります。
判断に迷う段階でも、早めに担当窓口へ声をかけてください。
兼業許可申請書を作成する
相談で見通しが立ったら、兼業許可申請書を作成します。
様式や記載項目は自治体・府省ごとに違うので、必ず自分の職場が指定する書式を使ってください。
総務省資料が示す神戸市の申請書を、見てみましょう。活動の概要、活動の目的・効果、所属する団体名が記載項目です。
および団体での役割、活動予定日時、予定報酬年額等も並びます。
活動日時の欄は、週休日や年次有給休暇等を活用する形です。公務に支障を出さない点が伝わる書き方にしましょう。
報酬欄は、社会通念上相当と認められる水準かどうかという考え方を踏まえて記入してください。
審査を受けて承認後に始める
申請書を提出した後は、審査を受けて結果を待ちます。
総務省資料によれば、神戸市の地域貢献応援制度では活動開始予定日の1か月前までに許可申請書等を提出する運用です。
相談と書類作成の時間も含めると、活動開始まで1か月以上の余裕を見込んでおきましょう。
報酬の受け取りや契約も含め、許可が下りる前に活動を始めることは避けてください。
その後も勤務への影響や活動内容の変化を、自分で点検しながら続けてください。
範囲を超えた副業は懲戒処分の対象になる
許可の範囲を超えた副業は、懲戒処分の対象になり得ます。
処分の重さは自治体や事案ごとに異なるので、自己判断で線を引かないでください。
続いて何が問われるのかを、3つの角度から確認しましょう。
継続的な販売は自営と評価される
無許可の副業で問われやすいのは、仕入れと販売を繰り返す形の取引です。
人事院の資料は、国家公務員法第103条が制限する自営業一般の例を挙げています。
小売や不動産賃貸、太陽光電気販売、農業が、その中身です。
反面、不用品の整理と販売目的で仕入れて売る取引もあります。
同じ売買でも、評価が変わるのです。
金額の大小だけでなく、継続性や規模から自ら営む事業とみなされるかが線引きです。
取引が積み上がる前に、承認の要否を確かめてください。
確定申告や住民税から把握される仕組み
税の手続きの流れのなかで、副業による収入が勤務先に伝わることもあるでしょう。
給与以外の所得が生じた場合、一般には確定申告を行います。翌年度の住民税額へ反映されると、説明されるのです。
なお勤務先が給与から住民税を天引きする特別徴収もあるでしょう。
その結果、税額の通知を通じて把握される余地が残るという指摘もあります。
むしろ発覚を避ける前提で考えるのではなく、許可が要る範囲かどうかを先に確認してください。
確定申告の要否や税額の扱いは個々の事情ごとに違うため、税務署や税理士に確認しましょう。
家族名義でも実態で判断される場合がある
名義を家族に変えれば許可が不要になる、という考え方は危険です。
その理由は、地方公務員法第38条にあります。任命権者の許可なく自ら私企業を営むことを、禁じているのです。
国家公務員法第103条についても、考え方は変わりません。人事院の資料は名義のみの役員兼業を禁止の対象としました。
条文が見ているのは名義ではなく、実際に誰が事業を動かしているかという実態です。
家族名義の事業をどう扱うかは、任命権者の規程や解釈ごとに判断が分かれます。
迷う段階で、人事担当部署へ相談してください。
公務員の副業は金額ではなく許可の要否から確かめよう
公務員の副業でできる範囲は、許可がいらない範囲・許可を得ればできる範囲・許可を得ても認められない範囲の3層で決まります。
「いくらまで」という一律の上限額は、法令上定められていません。
他方、不動産や太陽光発電のように基準が示された分野もあります。
まずは自分の副業が承認の要る行為に当たるかを、確かめてください。
最終的な線引きは、自分の任命権者の規程と許可基準で確認する必要があります。
判断に迷う案件は、申し込む前に人事担当の窓口へ相談しましょう。
※最新の制度は人事院・総務省の公式サイトをご確認ください。