甕覗舎KAMENOZOKISHA

14日

藍は、14日かけて目を覚まします。

当舎の藍は、染料を水に溶かしたものではありません。 すくも(藍の葉を寝かせて発酵させたもの)に木灰の上澄みと貝灰を合わせ、 そこにいる菌が働きはじめるのを待ちます。これを「建てる」と言います。

建て始めてから染められるようになるまで14日。うまくいかない甕が、 年に1本は出ます。そのときは中身を全部あけて、最初からやり直します。

藍が建つ日を、こちらで決めることはできません。

藍甕の液面。中央に泡が筏のように寄っている。
泡(藍の華)。これが立っていれば菌が働いている。

14日の手順

毎朝5時半に、甕を混ぜてから一日がはじまります。

  1. 1日目

    灰汁(あく)を取る

    樫の木灰に湯を注ぎ、一晩置いた上澄みだけを使います。濃さは舐めて決めます。数字の道具は使いません。

  2. 1日目

    すくもを崩す

    板状に固まったすくも18kgを手で崩し、灰汁と合わせます。ここで塊を残すと、10日目に必ず滞ります。

  3. 2〜4日目

    朝と晩に混ぜる

    1日2回、底から起こすように混ぜます。まだ泡は立ちません。においが藁から酒に変わったら、進んでいる合図です。

  4. 5日目

    ふすまと石灰を足す

    菌の食べ物としてふすまを入れます。入れすぎると甘やかしすぎて、泡ばかり立って染まらない甕になります。

  5. 6〜9日目

    温度を22〜26℃に保つ

    冬は甕の周りに籾殻を積み、上に蓋をします。20℃を下回った日は、その日のぶんだけ建ちが遅れます。

  6. 10日目

    泡を見る

    紫がかった泡が中央に寄りはじめます。この泡を藍の華と呼びます。華が立たない甕は、ここで見切ります。

  7. 12日目

    白い木綿で試し染めをする

    10cm角の木綿を1枚沈めます。上げて3分、緑から青へ変わりきれば、あと2日です。

  8. 14日目

    1反目を入れる

    最初に入れるのは、いちばん薄い段を取る反物です。若い甕は力が強すぎず、甕覗を出すのに向いています。

竿に掛けた三枚の布。淡い浅葱、藍、ほとんど黒い留紺。
干し場。1回くぐらせるごとに、3分だけ空気に当てる。

建てたあと

甕は、使わない日に痩せます。

建った甕は、染め続けているかぎり1年ほど保ちます。反対に、 注文が途切れて2週間も休ませると、菌が弱って青が浅くなります。 だから当舎は、注文がない週も自分たちの布を染めます。

1本の甕が一年に染められるのは、およそ220点。6本で1,300点ほどが上限です。 断っている仕事があるのは、この数のためです。

断っている三つの仕事