分銅
素手でつまみません。
指紋ひとつで 0.2mg 増えるからです。
皮脂は、拭いても完全には落ちません。落とすために溶剤で洗えば、今度は表面がわずかに減ります。 増やしても減らしても同じだけ困るので、最初から触らないという決まりにしています。 車から校正室まで、分銅は一度も人の指に触れずに運ばれます。
等級
同じ 20g でも、許される狂いが 32 倍ちがいます。
分銅には等級があり、上の等級ほど許される誤差が小さくなります。 値段は、重さではなく等級で決まります。同じ 20g で、E2 級は M1 級の 11 倍の値段です。
基準をつくる側
E2 CLASS- 20g の許容差
- ±0.025 mg
- 扱い
- ピンセットのみ
- 保管
- 木箱・乾燥剤つき
当所が天びんを校正するときに使う分銅です。年に一度、外の機関へ出して数字をもらってきます。
持ち歩く側
F1 CLASS- 20g の許容差
- ±0.08 mg
- 扱い
- 布手袋可
- 保管
- 車載の緩衝箱
お客様のところへ持っていくのはこの等級です。振動と温度差に強く、現場で使える下限がここです。
荷を量る側
M1 CLASS- 20g の許容差
- ±0.8 mg
- 扱い
- 素手可
- 保管
- 現場の棚
お客様の工場で日常点検に使っていただく等級。これを校正してお返しする仕事がいちばん多いです。
車の中
車に積んでいるのは 24 個、合わせて 61kg です。
現場でどのはかりに当たっても足りるように、組み合わせで作れる重さを増やしてあります。 20kg を 1 個で持っていくより、10kg を 2 個のほうが安全です。 落としたときに失うものが半分で済むからです。
| 重さ | 個数 | 使うところ |
|---|---|---|
| 10 kg | 4 | 台はかり・パレット秤 |
| 5 kg | 2 | 台はかりの中間点 |
| 1 kg | 6 | 厨房・計量器一般 |
| 100 g | 4 | 電子天びん |
| 20 g | 4 | 電子天びん |
| 1 g 以下 | 4 | 最小表示の確認 |
1年のあいだに
分銅は、置いておくだけで太ったり痩せたりします。
空気中の水分や埃が表面に乗れば増え、拭けば減ります。だから毎年測り直します。 下は、当所が持っている F1 級 6 個の 昨年から今年にかけての変化です。 中央の線が「去年と同じ」、右が増えた、左が減った、を表しています。
④ の 1kg が 2.3mg も増えたのは、去年の秋に一度、 現場で軍手のまま持たれたためだと分かっています。誰がやったかも記録に残っています。 怒る話ではなく、記録に残るという話です。
落とした分銅は捨てません。等級を一段落として、番号を書き直し、
社内の練習用にします。捨てると、なぜ落ちたのかが残らないからです。
出どころ
この分銅にも、親がいます。五代さかのぼると国の原器に着きます。
お客様の工場の M1 級は、当所の F1 級で測ります。当所の F1 級は、当所の E2 級で測ります。 当所の E2 級は、外の機関の上位分銅で測ります。その上に、さらに上位があります。 この連なりが切れていないことを紙で示すのが、私たちのいちばんの商品です。
| 段 | だれの分銅 | 測る相手 | 間隔 |
|---|---|---|---|
| 5 | 国が持つ原器 | — | — |
| 4 | 上位の校正機関 | 当所の E2 級 | 12 か月 |
| 3 | 当所の E2 級(校正室から出さない) | 当所の F1 級 | 6 か月 |
| 2 | 当所の F1 級(車に積む) | お客様のはかり・分銅 | 3 か月 |
| 1 | お客様の M1 級 | 日々の荷 | 毎日 |
どこか一段でも紙が途切れていると、その下は全部「たぶん合っている」に変わります。 当所が お断りしている仕事 の一つ目は、ここから来ています。