SUISE METROLOGY / 1962
うちの仕事の八割は、
数字が止まるのを待つ時間です。
分銅を置いてから、表示が動かなくなるまで。電子天びん1台で平均8分かかります。 40台お預かりした日は、5時間以上ただ待っていることになります。 その間、私たちは席を立ちません。歩くと床が沈み、また揺れるからです。
E2級 20g の分銅を載せた直後 / 表示は g / 最小表示 0.1mg
場所のこと
はかりは、置いた場所で値が変わります。運ぶと、変わります。
重さは、その土地が引く力の強さと掛け算になっています。 引く力は緯度と標高で違うので、東京で合わせた台はかりをそのまま那覇へ運ぶと、 10kg の荷が 7g ほど軽く表示されます。米なら気づきません。銀なら値段が変わります。
だから校正は、はかりを工場へ送り返す仕事ではなく、 そのはかりが今日から立っている床の上でやる仕事です。 私たちが分銅を車に積んで出かけるのは、そのためです。
お渡しするもの
校正は、直すことではありません。ずれを数字にして、紙に書いて渡すことです。
よく混ざるので、最初にお伝えしています。 調整は、ずれているはかりを正しい側へ動かす作業。 校正は、そのはかりが今いくつずれているかを測って書き残す作業です。 私たちが請け負っているのは後者で、ずれたままお返しすることがあります。
「直しておきました」と言えないのが、この仕事のいちばん説明しにくいところです。
直してしまうと、それまでに量った荷が正しかったのかどうか、誰にも分からなくなります。
昨年 12 月に量った 400 箱が正しかったかを後から確かめられるのは、 12 月の時点のずれが数字で残っているからです。先に直してしまえば、その証拠は消えます。 調整が要るときは、ずれを記録してから、別の作業としてやります。