蒼淵潜水SOEN DIVING

潜水日誌 12,480本のうち、四本視界30センチの岸壁で、
幅1.2ミリのひびを測る。

見えないものを、どうやって数字にするのか。よく聞かれます。 答えは単純で、ゲージを当てて、指で読むだけです。 下に、実際の四件を日誌のまま置きます(社名と場所は伏せてあります)。

1 目地が3ミリ抜けている(17番) 2 裏込め材の吸い出し穴 直径40センチ 3 ひび 幅1.2ミリ・長さ2.6メートル 4 根元の洗掘 深さ0.8メートル 陸側(舗装) 水深 0 m 水深 7 m・海底
図:一件目の岸壁の断面。印の1から4が、その日に見つけて番号札を打った場所です。図は当社が図形で描いたもので、実在の構造物ではありません。

NISSHI — 日誌から四件

陸の上の異変は、たいてい
水の中で半年前に始まっています。

  • 一件目 / 岸壁・護岸 / 水深7メートル

    舗装が5センチ沈んだ。原因は、17番の目地から毎日出ていた砂だった。

    陸の上では「舗装が沈んだ」としか見えていませんでした。水に入ると、目地が3ミリ抜けていて、 そこから裏込めの砂が吸い出され、壁の裏に直径40センチの空洞ができていました。 穴は手を入れると肘まで入りました。濁りで何も見えないので、穴の大きさは腕の長さで測っています。

    潜水
    3回(延べ1日)
    測ったもの
    目地の抜け 3.0ミリ/空洞 直径約40センチ/ひび 幅1.2ミリ・長さ2.6メートル
    その後
    注入で止め、翌年の点検で空洞の拡大なしを確認
  • 二件目 / ダムの取水口 / 水深22メートル

    取水量が落ちた。スクリーンに絡んでいたのは、魚ではなく2.4メートルの流木だった。

    「詰まっている」という連絡だけで、何が詰まっているかは誰も見ていませんでした。 ゲートを閉じた時刻を書面でいただいてから潜り、スクリーン下部に横向きに噛み込んだ流木を確認。 取り除く前に、先に絡み方を測ります。引き抜く向きを間違えると、スクリーンごと曲がるからです。

    潜水
    4回(2日)
    測ったもの
    流木 長さ2.4メートル・径18センチ/スクリーンの変形 最大9ミリ
    その後
    上流側へ抜いて撤去。スクリーンの交換は不要と所見
  • 三件目 / 水管橋の脚 / 水深4メートル

    塗装は無事に見えた。その下で、鋼材が4.2ミリ痩せていた。

    水面から覗くと塗装は残っていました。触ると、指で押せる場所が3か所ありました。 超音波の厚さ計を当てると、設計13ミリのところが8.8ミリ。 見た目がきれいなほど後回しになる、いちばん危ない種類の傷みです。

    潜水
    2回(半日)
    測ったもの
    残り厚 8.8ミリ(設計13ミリ・減肉4.2ミリ)/範囲 高さ1.1メートル
    その後
    当て板補強を提案。設計は当社では行わず、構造の設計事務所へ引き継ぎ
  • 四件目 / 沈船の引き揚げ / 水深15メートル

    横倒しだと思われていた船は、船首から泥に刺さって立っていた。

    引き揚げで最初にやることは、玉掛けではなく姿勢を測ることです。 この船は船首が泥に1.8メートル入って立っていて、聞いていた姿勢と違いました。 そのまま吊れば船体が折れていたので、先に泥を抜く工程を足し、工期は2日延びました。

    潜水
    11回(4日)
    測ったもの
    船首の埋没 1.8メートル/傾き 72度/全長 9.4メートル
    その後
    泥を抜いてから2点吊りで引き揚げ。船体の損傷なし

SUUJI

潜らなかった日も、同じ帳面に書いています。

断った日を記録に残さないと、その判断は次の年に受け継がれません。 下は昨年一年の集計です。

区分件数・日数内訳
点検・調査岸壁・護岸・防波堤41件延長にして合計3,180メートル
水管橋・取水口12件うち放流の日程で延期 3件
引き揚げ・撤去5件船2・車1・鋼材2
現場まで行って潜らなかった日9日流速4・波高3・放流の書面なし2
よその会社へ回した話6件水深30メートル超 4・夜間の緊急 2
潜水士の減圧に関わる事故0件創業から48年、この欄は0のままです

数字にならなかったものは、
「数字にならなかった」と数字の欄に書きます。

同じ見立てを、自分の現場で試す