一日の組み立て / 水深18メートルの岸壁点検の場合水に入っているのは46分。
手が動くのは、そのうち32分。
残りの14分は、降りることと、上がることと、上がる途中で止まっていることに使います。 止まっている5分は何もしていないように見えますが、この5分を省くと、体の中に溶けた窒素が泡になります。 潜水計画は、手を動かす時間ではなく、止まる時間から先に決めます。
HACHI KOTEI — 八工程
水に入る前に、
すでに三つ終わっています。
現場に着いてから潜るまで、およそ2時間。 この2時間を削った日のことを、私たちは一件も持っていません。
- 一
前回の日誌と、図面を突き合わせる(40分)
同じ岸壁でも、前に見たときの番号札が残っています。 「17番の目地が3ミリ空いていた」という前回の行を持って水に入るのと、手ぶらで入るのとでは、探す時間が変わります。
- 二
潮位・流速・放流の三つを測る(20分)
流速は毎秒1.0メートル、波高は0.5メートル、放流はゲートを閉じた時刻の書面。 一つでも欠けたら潜りません。帰った日の費用はいただきません。
- 三
送気装置を、二人で声に出して二度点検する(25分)
コンプレッサの吐出量、予備空気の圧力、ホースの折れ、通話の通り。 指を差して声に出すのは、黙って見ると目が滑るからです。二度やるのは、一度目で見つかった不備が年に数件あるためです。
- 四
番号札を打ちながら降りる
延長25メートルごとに札を打ち、そこを1スパンと数えます。 水中には目印がないので、位置は札の番号でしか言えません。写真の一枚一枚に、この番号が入ります。
- 五
触って探す
目地の抜け、裏込め材の吸い出し穴、鋼矢板の減肉。 手袋の指で面をなぞり、段差に引っかかった場所だけを調べます。濁っている日ほど、この工程は速くなります。目で迷わないからです。
- 六
測る
ひび幅はゲージを当てて0.1ミリ刻み、鋼材の残り厚は超音波、深さは巻尺。 「大きい」「ひどい」とは書きません。数字にならなかったものは、その旨を数字の欄に書きます。
- 七
決めた速さで上がり、5メートルで5分止まる
上がる速さは毎分9メートルまで。最後の5メートルは、いちばん体積の変わる区間です。 ここを急いだ人の話は、この業界に山ほどあります。
- 八
その日のうちに、所見を書く
翌日に回すと、手の感触の記憶が落ちます。 所見書は現場の車の中で書き始め、写真台帳と一緒に潜った日のうちにお渡しします。
濁った日ほど作業が速い、と言うと驚かれます。
目が使えないほうが、手は迷いません。
JIKAN
1日に潜れるのは4回まで。
体の中に溶けた窒素は、上がってすぐには抜けません。 次の潜降までに空ける時間を守ると、1日に潜れる回数は4回が上限になります。 「もう1回だけ」と言われて断るのが、この仕事でいちばん多い断り方です。
だから工期は、潜水の回数から逆算します。 延長120メートルの岸壁を、視界12メートルの日に見るなら、潜水は10回、日数は3日。 この計算は下見積りの画面でその場で出せます。