SEVEN STEPS
七つの工程
手漕ぎ艇「凪」の場合で、材を選び始めてからお渡しまで約40日です。日数の半分近くは、材を寝かせる時間と塗料が乾くのを待つ時間で、手を動かしていない時間が長い仕事です。
材を選ぶ
竜骨は米松、肋材は樫、外板は杉を使います。板は一枚ずつ手で反りを見て、曲げに使う面をその場で決めます。仕入れた材のうち、艇に使えるのは六割ほどです。残りは治具や型板に回します。
寝かせる
仕入れた材は、最低八か月あいだ当所の材小屋で寝かせます。屋根はありますが壁は片側だけで、潮風がそのまま通ります。急いで乾かすと、艇になってから反ります。
竜骨を据える
船の背骨にあたる竜骨を、床の定盤に固定します。ここで艇の長さと反り(ロッカー)が決まり、以後この寸法は変えられません。船首材と船尾板もこの段階で立てます。
肋材を起こす
型板から起こした肋材を、一枚ずつ竜骨に立てます。艇の断面の丸みは、この十一枚(型により十五枚)の形がそのまま出ます。ここまでは、まだ艇の形には見えません。
縦通材を通す
肋材の外側に縦通材と舷縁を通します。この工程を終えると、骨組みは手で押しても捻れなくなります。ここで初めて、艇の姿が見えてきます。
外板を張る
竜骨側の一枚(ガーボード)から舷へ向かって、九枚から十一枚の外板を張り上げます。曲げには水と熱だけを使い、薬品は使いません。一枚張るごとに当てて削る作業を繰り返すため、ここが最も日数を使います。
塗り、浮かべる
塗装は下塗り・中塗り・上塗りの三回。乾かす時間を含めて九日いただきます。最後に必ず当所前の入り江へ浮かべ、水線の位置と左右の傾きを測ってからお渡しします。
MATERIALS
どこに何を使うか
材は「その場所で何が起きるか」で選びます。曲げる場所、擦れる場所、水に浸かる場所。それぞれに向く木が違います。
| 部位 | 使う材 | その材にする理由 |
|---|---|---|
| 竜骨・船首材 | 米松 | 曲げずに真っすぐ使う部材。目が詰まって粘りがあり、長い材が取れるため。 |
| 肋材 | 樫 | 曲げて使い、そのまま形を保たせる部材。硬く、留め具が効くため。 |
| 外板 | 杉 | 水で曲げる部材。軽く、曲げやすく、割れても一枚で済むため。 |
| 舷縁の当て材 | 樫 | 人が乗り越え、荷が擦れる場所。減ることを前提に、ここだけ替えられるようにしている。 |
| 留め具 | 銅の釘・真鍮のねじ | 海水の中で鉄より長くもつため。ねじは後から抜けるものを選んでいる。 |
| 塗料 | 亜麻仁油系 | 木が呼吸できる状態を保つため。完全に密閉する塗料は使わない。 |
WHY WOOD
木でつくる理由は、
直せることです
木の艇は、樹脂の艇より手がかかります。それでも木で作り続けているのは、傷んだところだけを取り替えて使い続けられるからです。当所が1975年に納めた作業艇は、外板をのべ十四枚替えながら、五十一年目の今も同じ竜骨で浮いています。
- 毎回真水で流し、座板を外して乾かす
- 年1回上塗りを一度重ねる(半日・ご自身で可)
- 3年ごと当所で全体を点検(半日・費用は1万8千円)
- 7年ごと塗装を落として塗り直す(2週間お預かり)