紙を漉くところから始まる
スピーカーの声を決めるのは、直径わずか十数センチの振動板です。音澄舎はこの紙を市販品に頼らず、楮(こうぞ)と針葉樹パルプを配合して自分たちで漉きます。
紙料を配合する — 1日目
楮の長い繊維はしなやかさを、針葉樹パルプは張りを与えます。狙う音域ごとに配合を変え、冬は水温に合わせて叩解の時間を延ばします。
振動板を漉いて乾かす — 2〜5日目
円錐の型で漉き上げ、直射日光を避けて三日かけて乾かします。急いで乾かした紙は音が痩せるため、乾燥だけは季節に従います。
箱を削り出す — 6〜12日目
10年以上乾かした無垢材を、板取りから一台ぶんずつ。箱の内側には手鉋(てがんな)で浅い波形を付け、内部の反射を散らします。
組んで、配線する — 13〜16日目
ネットワーク回路は基板を使わず、部品同士を直接つなぐハンドワイヤリング。はんだの量まで決めて、左右の個体差を詰めます。
鳴らし込み、耳で判定する — 17〜21日目
七十二時間の鳴らし込みのあと、測定と試聴を往復します。数値が揃っていても、耳が「澄んだ」と言うまで出荷しません。
0.3mm振動板の紙の狙い厚
±0.5dB左右ペアの許容差
3往復測定と試聴の最少回数
素材の選びかた
| 振動板 | 楮 + 針葉樹パルプの手漉き紙。低音用は厚く、高音用は薄く漉き分ける |
|---|---|
| 箱 | 山桜・楢・胡桃の無垢材。乾燥10〜18年の板だけを使う |
| 吸音材 | 羊毛フェルト。量は一台ずつ試聴して決める |
| 塗装 | 拭き漆または蜜蝋。木の呼吸を止めない仕上げ |
| 端子・配線 | 無酸素銅の単線。経路は最短、はんだは最少 |
工房の見学は月に二度、予約制で受け付けています。紙漉きの現場からご覧いただけます。